第二話 「
カエル

カエルが苦手だ。
夢にたくさんカエルがでてきて目をさますことさえある。

きっとマノの家での事件がトラウマになっているに違いない。
マノの家の庭先に直径1mもあるような素焼きの大きな水瓶があった。
顔を洗ったり口をゆすぐのはそこでするように言われていた。

ある夜のこと、真っ暗闇の中で歯を磨いていた。

「寝るのかい」

マノ父が後ろから懐中電灯で私の手元を照らしてくれた。
と同時に私は腰を抜かした。

「ギヤアアアアアアアア」

土色と言うより、肌色の大きくてゴツゴツしたカエルが
水瓶の陰で赤い目を光らせていた。
それも一匹じゃなかった。
いつからいたのかわからないが何匹も何匹もいた。
 
悲鳴を聞いて飛び出してきた家人も事情を聞いて皆大笑い。
マノ母が大喜びして何度もカエルを照らしてみせる。

「ザジゴンはこんなものが怖いのかい?」

翌朝同じ場所。カエルが存在した形跡などどこにもなかった。
罪のない夜行性の両生類。
しっとりと冷たい水瓶が気持よかったのだろう。

が、なんとなく納得がいかない。
私がカエルに驚いて腰を抜かしたという話が村中に広まるのは時間の問題だ。
村の皆のうれしそうな楽しそうな顔が浮かんだ。
マノ父はそんな私を気の毒に思ってか、私が水瓶に向かうときには懐中電灯で周囲を照らしてカエルがいないことを確認してくれるようになった。

そしてそのたびに家人が「ザジゴンはあんなものが怖いのねえ」とはやすのだった。
 
続く、、、。
 

written by ザジゴン
 

 
 
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